医療判決紹介:最新記事

選択の視点【No.280、281】

今回は先天性異常の可能性に関する出生前の検査について、医師の責任が認められた判決を2件ご紹介いたします。

両事案とも、先天性異常の可能性を理由に人工妊娠中絶が行われている社会的事実・実態があるとしても、人工妊娠中絶を行うかどうかは、倫理・道徳にかかわる事柄であるという趣旨を述べ、検査に関する医師側の注意義務違反と、中絶の不実施あるいは子の出生との間の相当因果関係は否定し、両親が妊娠の継続・出産の自己決定や選択の利益・機会を奪われたことなどについての慰謝料を損害として認めました。

No.280の事案では、判決中に「優生保護法」という法律の内容が言及されていますが、同法は、平成8年の改正により、現在は「母体保護法」と改称されています。

同事案では、妊婦が、4回目の検査の受診日を誤解して、予定の検査日に来院しなかったという事情がありましたが、裁判所は、予定の検査日以来、切迫流産の予防のために被告医師の医院に入院して、被告医師の保護領域下にあったのであるから、上記事情も被告医師の診断義務の不履行又は注意義務違背を免じるものではないし、妊婦がその後、被告医師からなんらの指示や説明も受けなかったことから自分が風疹に罹患しているものとは考えなかったとしても、あながちこれを非難することはできないと判示しました。

No.281の事案では、被告側が、見舞金50万円・香典10万円を支払ったので、損害額から控除されるべきだと主張しましたが、裁判所は、見舞金及び香典は、その内容及び金額に照らし、訴訟において損害として請求されていない費目に関するものであるか、両親の損害を填補する趣旨のものではなく、社交儀礼上交付されたに過ぎないとして、慰謝料の算定にあたっての考慮すべき一事情になるにとどまる旨判示しました。

両事案とも実務の参考になろうかと存じます。

カテゴリ: 2015年2月10日
ページの先頭へ